第14章 BOY【A side】EP.7
しばらく俺たちにしがみついたまま、俯いていた。
「和也…」
優しく智が呼びかけると、ニノちゃんは漸く顔を上げた。
「…忘れよ…?今は…」
「智…」
「必ず、助けるから」
そう言うと、智は俺の顔をじっと見た。
「雅紀が、手を回してくれたよ」
「え…?」
子供みたいに驚いた顔をして、ニノちゃんは俺の方へ顔を向けた。
「もう…智ったら…まだ今日行ったばっかだから…」
「雅紀、どういうこと…?」
「ん?昔の恋人にね、頼んできたの。松本くんを助けてって」
「昔の恋人…?」
「そう。ヒュアキントスの社長」
「えっ…!?」
「極東翼竜会のヤクザさんだよ」
「知ってる…知ってるよそんなの…雅紀…」
「大丈夫。もうそういう縁は切れてるの。あっちから、俺は極道の世界には向かないって言われてるしね」
ニノちゃんの表情が、暗いものに変わりそうだった。
自分のせいで…そう思いそうなのは、去年からの付き合いでわかってる。
普段はシニカルで、平気そうな顔してるのに…
本当はすごく繊細で、すごく傷つきやすい。
そんな顔、俺達にしか見せないっていうことも、わかってるんだからね?
「ニノちゃんのせいじゃないよ。俺が松本くんを助けたいからお願いに行ったの」
「雅紀…」
「それに、ヤクザと付き合ってたのは事実だし。お金出してちゃんとお仕事として依頼してきたから、キニシナイ!」