第14章 BOY【A side】EP.7
「いい声、聞かせてあげなよ」
「何言って…」
「んでぇ…全部忘れさせてやるんだぁ…」
そう
今は…待つしかできない
安心して
ちゃんと種は撒いたから
だから、一瞬でもいい
忘れようよ
「忘れる…」
「そう…一瞬だけでもね…ずっと悲しいのは、辛いでしょ?」
「雅紀…」
俺のこと見てる智の目に涙が溜まった。
「和也、ずっと辛い…」
「うん」
ちらりと寝室を見た。
その時、すごい勢いでニノちゃんが寝室から出てきた。
手にはローションのボトルとコンドームのパッケージを持ってる。
怒った顔でそれを智に差し出すと、智はニノちゃんの腕ごと引き寄せた。
「うわっ…」
よろけたニノちゃんは智の俺の間に倒れ込んだ。
ボトっとソファの座面にボトルが落っこちた。
「なにすんだよっ…!」
「和也…」
ぎゅっと智はニノちゃんを抱きしめて離さない。
「離せ!そんな気分じゃないっ…」
「じゃあ、見てて…和也…」
「はあっ?なんで俺がっ…」
「いいから見てろよ」
じっと静かな目で智はニノちゃんを見つめる。
「な…なんだよっ…変態っ!」
「ああ。それでいいから」
「…なんだよそれ…」
静かな智の迫力に、どうやら怒りは萎んでいったらしい。