第14章 BOY【A side】EP.7
あの人…
俺の忘れられない、あの人は…
極道だった。
ヤクザの世界もいろいろで。
土地転がすひとやシャブ売ったり、詐欺やったりとかね。
カネになることは何だってやる。
女を金に変えるようなのが手っ取り早いから多いけど、あの人は男を金に変える専門だった。
まあ、完全なる趣味でもあったんだけどね。
あの人は、完全なるゲイで。しかも美少年が好きときた。
だから「ヒュアキントス」を経営してるんだよね。
まだ他に店は何個も持ってたけど、あの店はあの人の特別気に入っていた店だった。
でもヤクザの世界の中で、体面を保つために奥さんが居て、子供も居た。
だから、添い遂げることなんてできるわけなかったし。
それにあの人、俺のことあの世界には向かないって、何度も何度も言ってたしね。
あの人と添い遂げるなら、どっぷりあの世界に浸からなきゃいけなかったけど、俺は優しすぎるからだめなんだって。
だから…無理だったんだ。
最初から…
…一生に一度の…忘れられない恋、ってやつかな。
「また…あの人に会うことになっても…いいの…?」
「ふふ…大丈夫だよ。焼けぼっくいしないもん」
「……ホント…?」
子供みたいに…
不安げな目をして、俺を見上げてくる。