第14章 BOY【A side】EP.7
車のエンジンがやっと温まった。
エアコンを目一杯ロウに入れて、全開で冷風を浴びた。
「ふぅ…」
本当に若かったっていうか…バカだったっていうか。
智と俺の関係は上手く行ってたし、幸い俺と智の働いてた店はマージンをそんなに阿漕に取るような店でもなかった。
まあそれでも搾り取られたけども。
初めての給料日、見たことのない枚数の札を見たとき。
倒れるかと思った。
今思えば、あんなに頑張って働いた割には少なかったんだよ?
金がいくら引かれるとかなんにも知らなかったし、智もそこはなんにも言わなかったから…いや、多分よくわかってなかったんだろうと思う。昔から、そういうとこ大雑把だったから。
だから施設に居た頃、智には一回も持ち物も取られたことはなかった。
貰った給料が少ないなんて、当時はわからなかったけどさ。
それでも、当時の俺には大金で。
札をむき出しで受け取った俺の手は、震えてた。
俺の身体は、カネになるんだ。
俺のケツの穴は、カネを産むんだ。
思えば、頭んなか麻痺してたんだろうなって思う。
…じゃなきゃ、あんな事…
「ヤベ…今度は寒いし…」
最近買った外車のエアコンは極端すぎて。
思いっきり冷風を浴びてたら、腹壊しそうになる。
少し緩めて、また少し窓を開けて温度調節をした。
新宿方面に向かう国道は、相変わらず混んでて。
ねっとりとした暑い空気が、アスファルトの地面を這っていた。