第1章 仄暗い奈落の底から -sequel -
直接喋ったのは、その時の泥酔寸前の翔ちゃんが最後だった。
それから、幾度か店の前を通り過ぎる翔ちゃんを見るんだけど、決して彼は店には寄っていかなかった。
連絡しても留守電ばかりで…たまに電話に出てくれても、そっけない返事が続いた。
そんな日々が一年続いた。
ある日、智が気づいたんだ…
「和也…翔くん、痩せた?」
ぼんやりと店の外を見てると思ったら、翔ちゃんが通り過ぎていくのを目で追っていた。
「え…?」
慌ててガラス戸を開けて翔ちゃんを呼び止めようとしたけど、あまりの後ろ姿の細さに声が出なかった。
「和也…」
智が俺の肩に手を置いた。
「もしかして、翔くん何かあったのかもな…」
たまに店に来る雅紀や潤に聞いてみても、普段と変わりないって返事だったし。
どうやら二人には会ってるみたいだった。
どうして俺たちを避けるんだろう…
俺たちなにかしたんだろうか。
それとも仕事のことだろうか…それとも人間関係…?
いくら二人で考えてもわからなかった。
…いや…
本当は、わかってたのかもしれない
ただ…それを俺も智も、ちゃんと見えていなかっただけで…
本当は…