第13章 BOY【N side】EP.6
頬を包んでいた手を離すと、雅紀はタンブラーの水をごくごくと飲み干した。
「…でね。智とは施設ではそんなに仲が良かったわけじゃないんだけどさ。でも、ある日智が施設に遊びに来たんだよね」
智はげっそり痩せてて、目だけギラギラしてたんだって。
で、まっすぐに雅紀のとこに来ると、教えてくれっていうんだって。
「何を…?」
「男同士のセックスのやり方教えろっていうの…鬼でしょ…?中学生だったんだよ?俺…」
くくく…と雅紀が笑うと、また智は頭をガシガシと掻いて項垂れた。
「若気の至りです…」
雅紀が男のほうが好きっていうことは、その施設では有名になってたらしく。
ゲイのことは雅紀に聞けばいいって思ったんだって。
「身体売ろうと思ってたから、どんなことするか聞いておこうと思ったんだよ…」
「それは智らしくなく、賢明な判断だったと思うけど、それにしたって失礼だよね」
「だからすまんって…」
中学生だった雅紀は、持ってる知識を全部智に教えたんだって。
で、そのときに智が身体売って生活しようとしてることを聞いたんだって。
「まあ、お陰で覚悟はできたけどな。仕事、やってみたらそんな甘いもんじゃなかったけどな」
智はもともとゲイじゃなかったんだ。
でも、仕方なく…
「だから俺に、ストレートじゃないか?って聞いたの?」
「ん?まあ…無理するしんどさは知ってるからな…」
でも…智にとって、売りは天職だったらしい。
あっという間に、年齢ごまかして入ったデリでナンバーワンになったんだって。
「才能あったし…俺…」
なんか、俺みたいなこと言ってる…