第13章 BOY【N side】EP.6
「今じゃこんなほんわかしてるけど…智、若い頃は尖ってたからね…」
笑いを含んだ声で雅紀が言うと、智は頭をガシガシと掻いた。
「もお…ホント若気の至りだよ…」
年寄り夫婦は怒って、智を家から追い出した。
施設に戻ることも考えたけど、そこでも職員にひどい目に遭わされてたんだって。だから、戻ることはしなかった。
「その施設に、俺も居たの」
雅紀がにっこりして、俺の腿をポンポンした。
「え?雅紀も孤児…?」
「ううん。親は居たよ?でもね…小さい頃から好きになるのは男ばっかりだったからさ…いつからか、虐待されてたんだよね親に」
小学校も高学年になって身体が大きくなってくると、虐待は苛烈になった。
身体に傷や痣が目立つようになり、雅紀は児相に保護されたそうだ。
「気持ち悪いってさ…俺のこと。もう育てたくないんだって。だから、親元には返されずに、施設入れられてさ」
「雅紀…」
「ああ、もう。すぐそんな顔する…大丈夫。もう、俺の中では過去だから。今、最高にしあわせなんだから」
にっこり笑うと、俺の頬を手で包んだ。
「こんな優しいニノちゃんだから、話すの躊躇ったの。ごめんね…?」
「そんな…」
なんでそんな事言うんだよ…
優しいのは、雅紀じゃないか
優しいのは、智じゃないか
俺がそれに、気づけなかっただけだ