第13章 BOY【N side】EP.6
雅紀が水をまたタンブラーに注いで、ごくごくと飲み干した。
「まあ、俺もさ若気の至りだったと思うわ…中学卒業して、施設飛び出して智のとこに転がり込んで…同じとこで売り専始めたんだよね」
「あん時マジで、ビビった。来ると思ってなかったから…」
「あんなとこ、高校卒業までいるくらいなら、自力で生きて行ったほうがいいって思ったんだもん」
甘かったけどね、って雅紀は小さく笑った。
「…で、どうしてこんなお金持ちになったの…?」
そう聞いたら、ふたりともいたずらっこみたいな顔して笑った。
「それはね…」
雅紀が喋りだそうとした瞬間、玄関の方からものすごい音が聞こえてきた。
「ひゃっ!?」
「なんだ!?」
「びっくりしたあ…」
リビングのドアを開けて玄関の方に行ってみたけど、なんにもなかった。
「なんだったんだ?」
「こっちかな…?」
雅紀が、恐る恐る玄関のすぐ横にある小さな部屋の引き戸を開けた。
「うわっ…ちょお!智!これっ…」
「え?なんだよ…」
部屋を三人で覗いたら、智のコレクションが雪崩を起こして崩れ落ちてた。
「ああっ…ちょお!機材!機材!!」
雅紀が慌てて編集機材に駆け寄った。
「まいったな…どうしよう…」
床いっぱいに散らばるパッケージは、男の裸だらけ。
マッチョやら、女装子やら…
「智…片付け手伝うから…」
「手伝う…」
「そう、リーダーは智。俺は助手」
「…へい…」
機材チェックしてる雅紀を放って、俺と智はビデオやらブルーレイやらのパッケージを拾い集めることから始めた。
「うえー…なんでこんなあるんだよぉ…」
「智が考えなしに二丁目で買い込んでくるからだろ!?」
珍しく雅紀がブチ切れてる。
「さーせぇん…」
そんな智の情けない声を聞きながら、隅っこのほうに行ってるパッケージを手に取った。
「え…?」
なんかの間違いじゃないかと思った。
「どうした…?和也…」
床に座り込んでる智が、怪訝な顔をして俺を見上げた。
「嘘…嘘だ…」
そのパッケージの表紙に写ってるのは、松本だった
【窮鼠、愛を噛む③へつづく】