第13章 BOY【N side】EP.6
「そっか…」
智の身体が離れていって。
俺の両腕を掴むと、まっすぐに俺の目を見た。
「雅紀も俺も、売り専だったんだよ」
「え?」
智が…?雅紀が…?
身体、売ってたってこと…?
驚いて何も言えなくなってたら、雅紀がそっと俺の背中を押した。
「さ…こんなとこじゃ、暑いから。中はいろ?」
三人で、リビングから部屋に戻った。
相変わらずふかふかのソファに座らされると、智が俺の隣に座ってぎゅっと手を握ってくれた。
雅紀はキッチンから水を持ってきてくれた。
それから智と反対の隣に座ると、俺の腿に手を置いた。
「智から話す?」
「おん。じゃあ、俺から…」
ふぅっと息を吐き出すと、智は話し始めた。
「俺ねえ…親が居なかったの」
気がついたら、親が居なかったんだって。
だからなんで居なくなったのかとか、顔すらもう殆ど覚えてないらしい。
中学までは施設で育って。
途中で年寄り夫婦に引き取られて、なんとか中学の友達の町田くんと同じ高校行けることになったはいいけど、智は3日で辞めちゃって。
町田くんが、「こんなの意味がない!俺は自由に生きるんだ!」って言うから、勢いに乗せられたんだと。
「アホ…なの…その町田くん…」
「いや、町田はその後ダンサーになって。今は立派な振付師になってる…」
「げ…智が一番アホじゃん…」
「まあ、そう言うなよ…町田は俺と違って、ちゃんと親いたし…比べたら俺、可哀想じゃん」
ちょっと、悲しい顔をして智が笑うから、それ以上は茶化せなかった。
「まあ、実際かわいそうだったじゃん?智」
雅紀が笑って言うと、智もちょっとだけ笑った。
「まあ、そうだわな」
その年寄り夫婦は、智のこと自分たちの子供として欲しいっていうよりは、ジイさんがやってた会社の跡継ぎにさせたかったらしい。
愛されてるとは思ってなかったけど、酷くそれが智には我慢できなかったそうだ。