第12章 BOY【M side】EP.5
「別に…どうなったっていい…」
「自分を、大事にしなさい」
大事にするような、価値が…
ないんだってば
「自分をそんなに…卑下したって、誰も認めてくれない」
陰鬱な目をますます、陰らせて。
大男のほうが泣きそうになってる。
「なんであんたが泣くんだよ…」
「自分の価値は、人が決めるものじゃないっ…」
「…え…?」
「自分の価値は、自分で決めるんだ……」
そのまま、顔を伏せた。
俺の両腕を痛いくらい握りしめながら。
「覚えておいて…気持ち悪いオカマの言うことだけど…少なくともアンタの倍くらいは生きてるはずだから…経験からの言葉だと思って」
少し赤い目を俺に向けて。
「家に、帰れ」
そのまま大男のオカマは走るように、歩いていった。
俺を置いて。
うるせー…
なにが、自分の価値は自分で決めるだ
もう決められたんだよ
俺が望んでもないのに
勝手に決められたんだよ
俺の価値は
そのまま動くこともできず。
大きい荷物を持ってる手。
ハンドルが食い込んでいたい。
なんだよ
乱暴なんだよ
どいつもこいつも
俺のこと、人間だなんて…
ものを考える人間だなんて…
思ってねえんだろ