第12章 BOY【M side】EP.5
「俺がいつ、人の目なんか気にして…」
「だから言っただろうが。そんな顔して、構って欲しいからこんなとこ歩いてるんだろうが」
どんどん、にぎやかなネオンの煌々と灯る通りから、都営線の地下鉄の駅方面に向かってる。
大通りの交わる交差点には交番がある。
そこに連れて行かれると思った。
「離せっ…帰らないっ…離せっ…」
「アンタが二丁目でどうなろうと勝手だけど、アタシの目の届く範囲で堕ちられても目障りなんだよ。他所行きな。上野あたりなら、もっと下品にアンタのこと構ってくれるだろうよ。JRのトイレにでもしけ込んでな」
「…なんだよそれっ…」
「浮浪者みたいなのが、アンタのこと可愛がってくれるわよ」
そう言って、大男は足を止めた。
大通りの手前。ネオンが少なくなった辺り。
俺を振り返ると、陰鬱な目で俺を見つめる。
ざわざわと行き交う人が、俺と大男のオカマを面白そうに眺めて遠ざかっていく。
「…帰りなさい。家に」
「うるせー…」
「家に、帰れ。ここはアンタみたいな甘ちゃんが居たら、駄目だ」
「帰る家なんかない」
「そんなわけないでしょう……こんないい服着てるんだから、ちゃんと家あるだろう?」
ぐっと大男は、俺の両腕を掴んで。
迫力のあるオカマ顔を俺に近づけた。
「何があったか知らない。でもアンタはまだ、ここに来るには早いし、自暴自棄になるにしても若すぎる。悪いこと言わないから、帰りなさい…ね?」