第12章 BOY【M side】EP.5
「どうしたの…?何泣いてるの…?」
ここに来れば、二宮に会えるかと思った。
「なんでもない…」
にぎやかなネオン。
男だらけの通り。
無遠慮に舐めるように人を物色する。
ここに来れば、会えるんじゃないかって。
「ちょっと…ねえ、まだ若いんじゃないの…?大丈夫?ボク」
どぎついメイクに、派手な女装をした男。
なんでそんな格好してんの?
全然似合わない。
不気味なだけじゃん。
「家出?だめだよ?そんなすぐ分かるような格好でいたら。どこか行く宛はあるの?」
どこからどう見ても普通のサラリーマン。
あんたもゲイなんだ。
そんなこと言って、どうせ俺の穴目当てなんだろ?
キレイ事言いやがって。
「…っせーな…」
振り払うように、スーツから遠ざかった。
うるさい
別にいい
どうなったっていいんだ
話しかけるな
「ねえ、このあたりはあまり質の良くないのがいるから…よかったら、私の店…」
大男の女装のオカマが話しかけてくる。
「こない?ね?おいで…危ないから」
いいんだってば。
俺なんかどうなったって。
一万円なんだから。
たった、それっぽっちなんだから。
「話しかけんな。気持ちわりい」
大男のオカマは怯んで。
悲しい顔をした。