第12章 BOY【M side】EP.5
「あのさ…」
「うん?」
屋上の入り口のドアにはすりガラスがはめ込んであって、そこから淡い光が漏れている。
二宮の白い顔がぼんやりと光って見えた。
「おまえって…男が好きなの?」
「え?」
何が聞きたいのかわからない。
わからないのに、何聞いてんだろ…
二宮は俺の質問の真意を探るように俺の顔を凝視してる。
「…悪い。見たんだ。男と歩いてるの」
「ああ…そっか…」
きゅっと座ったまま床を踏みしめて音を出した。
「…松本にはわかんない世界のことだろうけど…」
そう前置きして、二宮は事情を語った。
「え…?親の借金?」
「そ。もー大変よ?何十万とかそんな話じゃない。ウン千万の世界で借金あんの」
「でも、おまえに返す義務なんて…」
「じゃあお前、家族見捨てられんの?」
「え?」
「俺は…見捨てることなんてできない」
重い話をしてるのに、それを感じさせない柔らかな表情で二宮は語ってる。
「だからさ…こんな商売してんだよね」
「商売?」
「そ。俺、身体売ってんの」
「え…売春ってこと?」
「そうだよ。男専門のデリヘルやってんの」
こともなげに、二宮は言い切った。
「もうさ、こんな商売だから朝起きて学校くんの辛いんだよね。だから休学すんの」