第11章 BOY【S side】EP.4
「本当に…?」
「あっ…はいっ…」
不安そうな顔をして、俺の目を真っ直ぐに見てくる。
こんな客は初めてで。
どうしていいんだか、こっちがわかんなくなった。
「こんなに若くて可愛い子が…俺なんかで、いいの?」
「えっ…」
自分だって若いのに…
それに、そんなこと…今まで言われたことない。
笑えよ…とか、無愛想だとか…
いつもそんなことばかりで。
自分が悪いってわかってるんだけど…
どうしても感情を顔に出さないってことができなかったんだ。
「そ、んな…」
「ふふ…真っ赤になって、可愛い…」
少し顔を近づけると、耳元で囁かれた。
ふわり、華やかな香水の匂いが漂った。
なぜだか、身体がかぁっと熱くなった。
「じゃ、行こうか…」
さりげなく、俺の背中を押して歩き出した。
その手が、腰の辺りで止まって。
自然に俺は、エスコートされる形になった。
いつもだったら、こんなキザなことされたら頭に来るんだけど…
この人がすると、自然に受け入れられた。
ふんわりと、優しく俺のこと導いてくれる…
こんな感じ、初めてで。
なんだか柄にもなく、ふわふわした。
これから、商売だって言うのに…
「名前は…?」
「し、翔…です…」
「そう…俺は、松本っていうの…よろしくね、翔」
腰の手が、するりとケツを撫でていった。