第11章 BOY【S side】EP.4
俺は、男専門のデリバリーヘルスの売り専ボーイってやつをしてる。
親は数年前、二人揃って事故で死んだ。
後見人の親戚に騙されて、親の保険金や預金は持ち逃げされてしまった。
まだ中学生だった俺は、妹と幼い弟を抱えて途方に暮れた。
警察も役所も学校も児童相談所も…どこも助けてはくれなかった。
親戚はどこをどう手を回したのか、俺名義の預金があるように偽装していて、金があるんだからと…誰も俺たちの話なんか聞いちゃくれなかった。
妹は中学生だが、弟はまだ小学生で…
二人の面倒を見なきゃいけなかったから、遠くに金を稼ぎにいくこともできず。
未成年だし、バイトをしても収入はたかが知れてた。
もともと、俺はゲイだって自覚してた。
だから、持っていた現金が底を尽きたとき。
…心が、荒みきったとき…
自暴自棄になって、体を売るしかないと…この世界に飛び込んだ。
「…もしも、俺じゃダメそうだったら、チェンジしてもいいからね…?もちろん、俺の希望ってことで」
「えっ…そんなっ…そんなことないですっ…」
こんな世界で…こんな人にめぐり逢えるなんて…
望んで入ったわけじゃないけど…
ゲイだって自覚してから、恋愛の機会なんてなかった。
だから、こんな俺でも恋人ができたら…
なんて夢見た気持ちは、一発で消えた。
それほど、この世界はエグかった。