第11章 BOY【S side】EP.4
まるで、夢のようだった
「やあ…君…?」
西新宿の、ラグジュアリーホテルのロビー。
キレイめな格好をして行けと、事務所の藤ヶ谷くんに言われて…
待機部屋にあった、誰のだかわからない薄手のジャケットを窮屈に羽織っている。
こんなところに呼び出す客は、大抵脂ぎった親父で。
今日もこってりとしたおっさん臭い精子を飲まされるのかと、ゲンナリしながら待ち合わせ場所に着いたところだった。
柱に凭れてスマホで客に連絡しようとしていたときに、横から声を掛けられた。
端正な顔立ちの、凄く若い男の人だった。
色が白く、目がとても印象的で眉毛が濃い。
前髪には緩やかなパーマが掛かっていて、半分だけ額に掛かってる。
白のコットンシャツに、グレーの細身のパンツ。
腕にはダークグレーの高そうなコートを畳んで引っ掛けてる。
ラフな服装なのに、どことなく上品さが漂っていた。
「ヒュアキントスの…」
「あっ…はいっ…」
この人が…こんな人が…?
内心、驚いてしまった。
「やあ…驚いたな…」
「え…?」
「こんなにキレイな子が来ると思ってなかったから…」
「そ、そんな…」
「俺で…大丈夫?チェンジしなくてもいい?」
「えっ…」
客からチェンジされることはあっても、俺達のほうからできるはずもないのに。