第10章 もっと♡にゃんこわんこ
翔のおうちから、ずうっとずうっと離れた、やまの近くまできた。
あいばせんせいの病院よりも、まだ離れてる。
「…こんな遠くまで…これじゃ車で来たほうがよかったかな…」
あいばせんせいは、あせっかきだから、ふうふう言ってる。
「でもそれじゃさとしが匂い辿れないでしょ…」
「あ、そっか」
やまののぼり口に、小さなじんじゃがある。
ここは夜になると、にんげんは暗くて気味がわるいからって近づかないばしょだ。
じんじゃにいく階段を見上げた。
ふんわり、山の方から風が吹いてきた。
「…かずっ…」
「お、おいっさとし!」
「急に走るなって!」
じんじゃに行く階段から、かずのにおいがした。
「ちかくにいる!ここにいる!」
「わかったから。落ち着いて。俺ら、追いつけないから」
「それに危ないからね。階段。ちょっとゆっくりね?さとし」
「…はあい…」
にんげんふべん。
走り出しそうなぼくのてを、まつもとさんとあいばせんせいは両方からにぎってはなしてくれない。
ぼくは鼻をくんくんしながら、かずのにおいがだんだん濃くなってくるのを感じた。
「いる…かず、いる」
「そっか…そっと、近づこう?」
「そうだな。かず、逃げるかもしれないし」