第10章 もっと♡にゃんこわんこ
「入社した頃に…俺がひとりで始めたことが…今になって実を結んでさ。だから大抜擢なんだ。プロジェクトの責任者になって赴任することになる」
はあっと息を吐き出すと、俯いてしまった。
「…とてもじゃないけど、海外でかずやさとしと一緒に暮らすことはできない…日本なら治安がいいから、昼間ふたりで留守番させられるけど海外じゃそうはいかない…」
「そう…だよな…」
「うん…」
ぼくのてってを握ってるかずの手がぎゅってした。
「かず…?」
かずはじっと翔を見つめたまま動かない。
「かず…どうしたの?」
かおがまっしろになってる。
「かず?かず?どうしたの?ねえ…」
あいばせんせいの抱っこから起き上がって、かずの肩をゆすった。
「かずっ?ねえ、おへんじして?」
「おい…かず…?」
あいばせんせいも、かずの様子がおかしいのに気づいた。
「どうしたんだ?かず?」
ぼくの後ろからあいばせんせいがかずに向かって手を伸ばした。
「いやだぁっ…」
その瞬間、すごいいきおいでかずが立ち上がった。
「いやだっ…いやだっ…そんなのいやだっ…」
かずは叫ぶと部屋を飛び出していった。
「えっ…!?かず!?」
なにが起こったのかわからなかった。