第10章 もっと♡にゃんこわんこ
庭の境目にあった低い生け垣は、最近まつもとさんが取ってしまった。
ここに小さな柵と扉をつけてくれてて、扉には鍵がかかってないから、かずとぼくはいつも自由に出入りしているんだ。
もう陽が落ちきって、暗くなっている中。
ぽてぽて歩いてまつもとさんちのお庭に入る。
「あ。松本さん帰ってきてるね」
「うん。でんきついてる」
かずとふたりで、リビングの窓に張り付いた。
中はカーテンが掛かっててよく見えない。
「まちゅもとしゃーん」
「まっちゃーん、あーけーてー」
中からガタガタガタンッてすごい音が聞こえたかと思ったら、すごい勢いでカーテンが引き開けられた。
「泥棒!?」
まつもとさんは、やきゅうのバットを持ってる。
「…は…?」
やっとぼくたちだって気づいたのか、慌ててバットを後ろに隠した。
「かずっ、さとしっ…」
「まつもとしゃーん…あけて?」
「まつーん、あけて?」
「ちょ、ちょっと待ってろ」
そう言って、窓の鍵を開けてくれた。
「どうしたの?こんな時間に…玄関からじゃなくて、こっちから来るなんて…」
すごく心配そうな顔をして、まつもとさんは僕とかずの頭を撫でてくれた。
「あのね、おうちあそびにきて?」
「翔がね、元気ないの」
「え?翔くんが?元気ないの?」
「うん…だから、あそびにきて?まちゅもとしゃん」
「ぶぶ…相変わらず松本って言えないのな…さとし…わかったよ。飯食ったらすぐ行くから。待ってて」