第2章 今日の猫来井さん③
「でも、さ…やっぱり俺も猫族だから…」
ニタリと猫本さんは笑います。
「は…はい…?」
「たまには強いまたたびで、楽しみたいって思うわけよ…」
「そ、うでございますか…」
その気持ちは痛いほどわかります。
たまには強いまたたびに身を任せ、浮世のくさくさを忘れたく思うことは、わたくしにもあります。
え?私もくさくさするのかって…?
そりゃ、ございますよ…
忘れたい程のくさくさは…
例えば、猫野さんのお宅で繰り広げられたあれやこれ…
「にゃああああああああああ!何を思い出させるのです!」
「うわ…ビビった…急に何」
「とにかく!いけません!こんな昼間から、またたびなどと!」
「もう遅いよ…」
猫本さんがまたニヤリと笑って、寝室に目を向けます。
「和のご依頼は、純度の高い国産またたび一袋…」
なんと…贅沢な…!
「猫来井さぁ~ん…」
トロンとした猫宮さんの声が聞こえます。
「…なんでございましょう…」
恐る恐る振り返ると、猫宮さんは寝室のドアに凭れ掛かるように床に座り込んでいらっしゃいます。
み、見える!
見えるって!そのでかいの!
「一緒にするぅ…?」
「なにをでございましょう…」
嫌な予感しか致しません…
「一緒に、またたび…する?」
「ふにゃぁ…」