第9章 からふるどろっぷすす from ドラジェ ─dragee─
「俺ぇ…自分がオスだって…初めて自覚したかも」
「お…オスぅ…?」
雅紀が素っ頓狂な声を出した。
「さっき、ネコ専門だって言ったじゃねえか…」
俺がそう言うと、智はいたずらっぽく笑った。
「そうだよお…俺、ネコだけどぉ…でも、あの子だけはね」
「あの子」
って面か。
あんな男らしい顔してんのに。
ま、わかるけどね…
あんなにネコの才能持ってるやつ、初めてかも。
ネコになるために生まれてきたんじゃねえの?
だから…童貞だって捨てらんなかったんだ。
「なんかさあ…俺も可愛いって自覚はあるんだけど。あの子、違うんだよね。自分がネコの才能あること、まーーーったく気づいていなくて…」
「ああ…そうだよね…」
思わずニノが頷いている。
「ニノちゃん…?」
「は?」
またちょっとオスになりかけてるから、雅紀は疑問を引っ込めた。
「なんでもない。どうぞ」
「あれよね。自分がゲイだってことも…気づいてなかったよね?」
「あっ…そうそう、そうなんだよ!あの子、男のほうが感じるって、自分でわかってなかったんだよね!」
智が嬉しそうに笑う。
「俺ぇ…バージンもらっちった…」
「えっ!?」
「俺の中のオスがぁ…目覚めちゃったっ!」
きゃーとか言いながら、手で顔を隠した。
ニノは、しらーっとした顔で智を見てる。
雅紀は、わけがわからないって顔して俺と智をキョロキョロと交互に見てる。
だから俺を見るな。