第9章 からふるどろっぷすす from ドラジェ ─dragee─
「さっ…さとしいい~~~~!!!!!」
雅紀が悲鳴みたいな声を出しながら、智の口を塞いだ。
「ふがーーーーっ!」
「いい子だから、暫く黙っていようねっ!?ねっ!?」
「もがーーーーーっ!」
ニノはそんなふたりをとても冷たい目で見ている。
「…俺の初めての客も相葉さんだったけど…?こういうの初めてって言ってなかったっけ…?」
「えっ…あっ…そ、そのお…」
雅紀は途中まで客だったんだが、単車が欲しくて単発バイトを探していた。
タチ専門が少ないからニノが誘ってこの店で働くようになったんだ。
今はバイクを手に入れたから、こっちは出勤が少ないけど。
智のほうがニノよりも早く仕事を始めてるから…
その矛盾に気づいて、ニノはお怒りのようだ。
「ニノ…許してやれよ…」
「だって、翔さん…この人嘘つきなんだよ?」
うーわー…めんどくせぇ…
やっぱネコは中身女みたいだな。
「雰囲気ってもんがあるだろうよ…ニノくらいのプロにだったら解んだろ?」
「え?プロ?」
こういう時は、褒めて持ち上げるに限る。
誰だって褒められて悪い気はしないんだからな。
特に中身が女なら、イチコロだろ。
「ニノだって売れっ子のプロなんだから客に言うだろ?こんなの初めてって…それと一緒じゃん?もういいだろ?」
「ま、まあ…?今は同僚だし…別にいいけど…」
雅紀がホッとした顔で、智の口を塞いでた手を離した。
「もお、苦しい…相葉ちゃん…」
「ご、ごめんねっ?智…」
智はむすっとしてまた、テーブルに突っ伏した。