第2章 今日の猫来井さん③
「にゃっにゃっにゃっ…」
「ぶっ…すげえ猫語に戻ってるけど…?」
どんどん近づいてくると、しゅるりとまた長い尻尾が私の腕に巻き付きました。
今度はキツく。
「は、離して…」
「猫来井さん…」
ふんわりと、猫本さんから香りが漂ってきます。
「これは…」
「ふふ…気づいた…?」
「い、いけませんっ…近寄らないで…!」
「いいから…もっと感じろよ…」
「にゃっ…」
逃れようとしても、今度は猫本さんにがっしりと腕を掴まれて。
「ふにゃぁ…」
ぐんと強く、香ってきます…
「ち、力が…入らにゃい…」
「ふふ…いいだろ…昨日仕入れたんだよ…」
私の腕を掴んでいるのとは反対の手が、ジーパンのポケットから袋を取り出しました。
「国産の ま た た び だ…」
「ふにゃあっ!!」
い…いけませんっ…いけません…!
仕事中にまたたびなどと!
「お…やめください…」
飛びつきたくなるのを必死で堪えます。
「私は…仕事…ちゅう…」
「いいよ…だって、依頼主の和があんなになってるんだぜ?」
猫本さんが振り返って寝室の方をご覧になりました。
寝室のドアには、パジャマの上着を羽織っただけのしどけない格好の猫宮さんが、もたれかかってこちらを見ておりました。
「猫潤…もっと…ちょーらい…?」