第8章 遠別
「さあ…行こうか…」
ぎゅっと手を握ると、君は微笑んで…
「…うん…」
照れくさそうに俺を見ると、目を閉じて触れるだけのキスをくれた。
「行こう……」
外は、凄い吹雪で。
1メートル先も見えない程だった。
風の音と寒さで、顔も耳も凍りつきそうだった。
ニット帽の上にダウンのフードを被せて、玄関を出た。
両手に持てるだけの荷物を持って、庭に停めていたオンボロの中古車の後部座席に荷物を詰め込んだ。
サラサラの雪を払いながらなんとか車に乗り込むと、エンジンを掛けた。
「…無事…?」
「なんとか…」
「凄いね…この冬一番かも…」
「ね…ほら、見て…まつ毛、凍った…」
薄暗い中、君は俺に向かって目を瞬いている。
そのまぶたに、ちゅっとキスをする。
「なんでキス…」
「したいから」
「もお…」
照れて笑うと、俺の頬に冷たい唇を付けた。
「もう行けそう…?」
「まだ…もうちょっとエンジン温まらないと…」
その間にもワイパーを動かしてるけど、外は真っ白で。
なんにも見えない。
暫く手を繋いで。
エンジンが温まったら、出発した。
予め、ふたりで見つけておいた場所に向かう。