第8章 遠別
二重サッシの窓の外…
すごい風の音が聞こえてくる。
また、今日は大荒れの天気になるようだ。
「…起きて…」
さっきまで繋がり続けていた俺達は、短い時間だけど眠っていたようで。
君の寝顔をいつまでも見ていたかったけど、もう時間がなかった。
細い肩を掴んで揺らすと、君は目を覚ました。
「ん…?」
「起きて…時間だよ…」
「もう…?」
寝ぼけた目を指で擦ると、少し顔をしかめた。
「精液臭い…」
「ぶっ…風呂、もう一回入ろうか…」
「うん…」
もう一度湯を落として。
ふたりで身体を洗って。
ゆっくりと身体を流すと、湯に浸かって。
その間、言葉を交わすことなく…
お互いを見つめて、ただ微笑んでいた
ただ、ただ…
しあわせで
満たされて
君を抱きしめると、涙が出た
風呂から上がると、身体を拭いて。
髪を乾かして。
服を着込んだら、荷物の整理をした。
もともと少ない荷物だから、そんな大きいものにはならなかった。
「もう、いいかな…食器とかは置いていこうか…」
「うん…そうだね…」
少しだけ、名残惜しそうに君は部屋を見渡した。
短い間だったけど、俺たちの住処で…
初めて君と暮らした、思い出の部屋。
ふたりで暫く、壁に凭れたまま座って手を握りあった。