第8章 遠別
しゃかしゃかと箸でそれを混ぜると、スクランブルエッグが出来上がった。
「これねえ、たまねぎとベーコンの旨味が入ってるから美味しいよお。ちょっと色は悪いけどさ」
「うんうん」
ちゃちゃっとテーブルにスクランブルエッグを置くと、両手鍋の蓋を開けて、サラサラと顆粒のコンソメを入れる。
「ん~…まいっか!」
ストーブの上に載せてたロールパンからもいい匂いが漂ってくる。
そろそろノートパソコンは片付けておくか。
隅っこに寄せて、ダイニングテーブルを空けておいた。
「あ、ありがと。もうできるからね」
君はスープ皿に、スープをよそって。
それからストーブの上のロールパンをお皿に盛ってくれた。
「たべよー!」
「はーい!」
温かい…たったこれだけの食事なのに、とってもあったかくて…そして満たされる食事だった。
「ロールパン、ちょっと焦げちゃった…」
「大丈夫。香ばしいよ」
「気をつけてひっくり返さないとだめだねえ…」
「スープ凄い美味しいよ」
「ん!これ、簡単だけど激ウマだよね」
なんて言いながら君と囲む食卓。
どれだけ贅沢で、どれだけしあわせなことか…
思わず、テーブルに載っている君の手を、ぎゅっと掴んだ。