第8章 遠別
「ずるのやつって…ぶぶぶ…」
君はココアにはうるさくて。
練って牛乳を入れたココアじゃないと認めないとか言ってたけど。
ついに、この便利さに落ちたようだ。
「手軽に飲めるからいいでしょっ?スーパーで安かったんだもん!」
「俺は別に…最初から森永のでもいいんだけど…?」
ずずっとマグカップでココアを飲むと、ちょっと湯上がりで冷えてた身体に温かさが染み渡る。
「美味しい…」
「やっぱ、練ってるやつのが美味しいんだけどなあ…でも、便利…」
ブツブツ言いながら、小ぶりの両手鍋に水を入れてる。
「スクランブルエッグとお…あと、スープ…」
たまねぎを裏口から持ってきて、皮を剥いて半分をくし切りに刻む。
ベーコンを冷蔵庫から出すと、2,3枚を短冊に切る。
俺は、調理は大の苦手だから…
君の料理は、男の料理なんだが、それでも器用だなと思ってしまう。
隣のコンロでフライパンを温めて、バターを落とし込む。
そこに、たまねぎとベーコンを入れてざっと炒める。
バターのいい香りが漂ってくる。
塩コショウをして、ざっと炒めると、隣の鍋へそれを放り込んだ。
溶いていた卵に牛乳を少し入れて、調味料で味付け。
フライパンに追加でバターを入れると、少し温めて…
卵液をフライパンに落とし込むと、じゅわっといい音がした。