第8章 遠別
キッチンのダイニングテーブルに腰掛けて、ノートパソコンの電源を入れた。
テレビがないから、ニュースなんかはパソコンやスマホで仕入れる。
食事を作ってる君にも見えるよう、パソコンにした。
「今日は、お天気どう?」
「ああ…ちょっと待って…」
だいぶ古いノートパソコンだから、起動に時間がかかる。
起動音がウンウン言ってるから…そろそろ買い替え時かな。
「さっきねえ、外に出たら凄い雪が積もってたよ!すごかったんだねえ。昨日の吹雪」
「風の音がすごかったもんね」
「うん!だから灯油やさん来た時…なんていうの?雪を、漕ぐ?っていうの?あれしたよ!」
「そっか。大変だったでしょ…あとで雪かきしなきゃね」
「…俺がやるから、寝ててね?」
君は苦笑いを俺に投げかけて。
それを見た俺も、苦笑いする。
「通路、作るだけでいいよ…郵便屋さんが通れるくらいの」
「うん。そうしとく。俺も腰痛い…」
トントンと年寄みたいに腰を叩くと、卵を割って…
カシャカシャと混ぜる音が、とてつもなく幸福だ。
チンと電子レンジが音を立てた。
君は中からマグカップを2つだして、俺のまえに一個置いた。
「はい、ココア」
「え…作ってくれたの?」
「練ってないよ…森永のずるのやつ…」