第8章 遠別
君に抱き上げられて、やっとこさ風呂を出る。
脱衣所に上がったら、お互いの身体を拭きっこして。
君はくすぐったがりで、すぐ笑って身体を捩るから、全然拭けないんだよな。
いつも。
「ちょっと、じっとしててよ!」
「だあって…くすぐったい…」
今日俺、まじで足動かないのに…
逃げていくんだよ…君は…
「待って!」
思わずでかい声を出したら、君はぺろりと舌を出した。
「かわいい舌じゃないか…引っこ抜いてやろうか…」
「もう、抜かれる運命だもん。だからいいよっ」
そう言って、勢いよく舌を出した。
「バーカ」
思い切りつまんでひっぱってやったら、しばらく再起不能になってた。
「もお…おばかあ…」
身体が拭けたら、もこもこに着込んでリビングに戻った。
「しゃむいしゃむい…なんか温かいもの作るね」
「うん。昨日、晩飯食ってないから…腹減った…」
「じゃあ、たくさん作る!」
「頼んだ」
リビングの布団には寝られない。
精液臭い。
我々が出したものながら、やっぱり臭いものは臭い。
あとで動けるようになったら、シーツを変えよう…
テレビがないから、部屋の中はしんとして…
君が料理を作っている音だけが、聞こえてくる。