第2章 今日の猫来井さん③
なぜにご機嫌斜めなのでしょう。
「あの…私、お仕事始めておりますので…どうぞごゆっくり…」
ダイニングキッチンのお部屋のカーテンを開けて、窓を開けます。
今日は秋晴れの良い天気です。
空気を入れ替えましょう。
「猫来井さん…」
「ふぁ!?」
窓を開けたところで、真後ろで猫本さんの声がしました。
慌てて振り返ると、すぐ後ろに立っていらっしゃいました。
「にゃ、にゃにごとでしょう!?」
慌てて、隅に置いてあるテレビの前まで飛んでしまいました。
「そんな避けなくてもいいでしょ…」
「は、はい…」
そう言いながら、猫本さんは私の方に近寄ってきます。
しゅるりと長いグレーの尻尾を私の腕に巻き付けました。
「和、昨日徹夜したんだって。だから、掃除はあとにしてやってよ」
「は、はあ…」
「先に料理?作り置きするんでしょ?手伝うよ」
「い、いえ。滅相もありません。私ひとりで大丈夫ですから…」
さっとソファに置いていた私のカバンまで飛び退くと、お財布を取り出しました。
「お買い物に行ってまいりますので…」
「あ、荷物持ち付き合おうか?」
「け。結構にゃんっ」
慌てて猫宮さんのお家を飛び出しました。
…一体、猫本さんはなぜ猫宮さんのお家にいらしたのでしょう…
そしてなんで鍵をお持ちなのでしょう…
私にはとんとわかりません。