第2章 今日の猫来井さん③
「ああ…まあ、約束っていうかね…」
ぷるっと猫本さんのグレーの毛並みの右耳が震えます。
しぱっと尻尾で自分の足を叩くと、ポケットから鍵束を取り出しました。
「あらら…?」
「ま、入ってよ。どうせ寝てんでしょ?」
玄関の鍵をガチャガチャと開けると、私の先に立って猫宮さんのお宅に入っていきました。
「和ー?寝てんの?」
小さいながらも1DKのお宅。
寝室にしているお部屋に、猫本さんは入っていきます。
「んにゃぁ…眠い…」
猫宮さんのか細い声が聞こえます。
「おまえ、また徹夜したんだろ…」
「にゃってぇ…」
ちらと寝室にしているお部屋を覗き込むと、猫本さんがベッドに腰掛けて寝ている猫宮さんの鼻にちょいちょいと触れています。
「やらぁ…眠いのぉ…」
「猫来井さん来てるぞ?」
「にゃぁぁ…」
猫宮さんは顎まで布団に潜り込んで私の方を見上げました。
「もおそんな時間なのぉ~…?」
しぱしぱ目を瞬かせながら、ぐるぐると喉を鳴らします。
「なにごろついてんだよ…」
「んにゃあ?」
寝ぼけているせいか、ずいぶん猫宮さんは猫語が多くなっています。
対して猫本さんはちょっとご機嫌斜めです。
はて?