第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「今日は、船が出るの…?」
「ああ。サクミルが…」
「えっ…?」
サクミル王子がヒッタイトにニノシスを連れて帰る日だった。
「そうなの…?」
「ああ。彼の地へ行けば、ニノシスも悪さはできまい…」
「…そっか…」
窓からぼんやりとナイルの方を眺めていると、人だかりがこちらに近づいてきた。
その中にひときわ目立つ異国の格好をした、サクミル王子が見えた。
こちらに手を振っている。
ジュンフィスが軽く手を振り返すと、サクミル王子は頭から布を被った、メジェドみたいになってる人を連れてこちらに歩いてきた。
「なに…アレ…」
ジュンフィスの顔を見上げたけど、ふふっと笑ってる。
「やあ!シャトシ!ヤリ疲れか?」
「ぶふぉっ…や…ヤリ疲れって…」
「…大野…」
「え…?」
メジェドから俺の名前が聞こえた。
空耳かと思ったけど、たしかに聞こえた。
「え…?へ…?」
「大野…だな…?俺だ…」
メジェドが被ってる布を捲くりあげた。
「えっ…えええええええっっ…!?」
そこには…櫻井教授が居た。
「なっえっ!?なに!?ええええっ…」
目の前に、同じ顔が2つ並んでる。
「なんでここに!?」