第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
次の日、腰とケツが痛くて。
全然起き上がれなかった。
こんなに…痛いものなんだな…
知らなかった…
「シャトシ、起きられるか…?」
ジュンフィスが、一日政務を休んで、付ききりで部屋に居てくれて。
なんだか申し訳なかったけども、でも嬉しくて。
「ううん…だから、抱っこして?」
寝台に寝転がりながら、ちょっと甘えてみた。
「…可愛い…」
「え?」
「なんでもない」
ゆっくりと寝台に乗り上げてくると、俺のこと横抱きにしてくれた。
「ほら、飲めるか?」
そう言って、飲み物の入った柄のついた金杯をマサスから受け取った。
「うん…」
この時代だから、冷たいものってわけにはいかなかったけど…
甘い液体が、疲れた身体に心地よかった。
「ありがと…マサス…」
このドリンクは、マサスの家の秘伝の水だそうだ。
一体何が入ってるんだか…聞かないほうがいいだろう。
「いいえ。早くお元気になってくださいね」
ちょっと誂うような口調に、恥ずかしかった。
でもだるくて…ジュンフィスの胸に凭れながら、顔を隠すこともできなかった。
ナイル川の方が、今日はなにやら騒がしい。
大きな船が、今日出ていくらしく、バタバタと人が行き交ってる。