第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「…このジーチャンノワイパーがないと…ニノシスはなにもできない」
「えっ…へっ…!?」
それ…ただのワイパーじゃないの!?
「返せっ!ジーチャンノワイパー!」
「フンっ…!」
ジュンフィスは、そのワイパーをバキッと折り曲げてしまった。
「ああああっ!なんてことをっ…ジュンフィスっ…」
さらにバキっ…バキっ…とジュンフィスは、ワイパーを壊していく。
「…これで…もう、妙な術も使えまい…」
「なんてことを…なんてことを…ジーチャンノワイパー…」
ガクリとニノシスは、床に膝をついた。
「…もういいであろう…?ニノシス…」
サクミル王子が優しく、ニノシスの肩に手を掛けた。
「うるさいっ…おまえに何がわかるっ…」
その手を払いのけると、ニノシスは床に突っ伏して泣き出した。
「私はジュンフィスのために…生きてきたのにっ…」
胸が突き刺されたようだった。
ニノシスも…俺と同じ思いを…
サクミル王子はため息をつくと、立ち上がった。
ひょいっとニノシスを肩に担ぎ上げると、俺に向かってウィンクした。
それから、ジュンフィスをじっと見つめた。
「…約束は果たしたからな…?わかってるな?」
「ああ…わかっている」
「じゃあな」
呆然としている俺たちを残して、サクミル王子はニノシスを連れて部屋を出ていった。