第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
胸が熱くなって…ボロボロ涙が止まらない。
「会いに来てくれて、嬉しかった…」
「うん……」
また指で涙を拭ってくれた。
「ニノシスの呪術は、もう取り上げたから心配はいらぬぞ」
「え…?」
「だからもう…安心するがよい…」
「ジュンフィス…」
どうやって…そんなこと…
「入るぞ」
部屋の外から、声が聞こえたかと思うとバタバタと足音が聞こえた。
「サクミル王子…!」
「おお…久しぶりじゃないか。シャトシ…相変わらず、ミステリアスな美しさ…」
そう言ってるサクミル王子が連れてるのは…
「ニノシス…!」
「はは…びっくりしたか?」
サクミル王子はガハハと笑うと、カウチの向かいのベンチに腰掛けた。
「は…離せっ…」
小綺麗な異国のドレスを身に纏ったニノシスは、腰をロープで括られて、その先がサクミル王子の腰のロープに繋がってる。
「は…?へ…?ど、どういう…」
「ニノシスは、我がアッカドの第一王子の妃となった」
「は…?だ、第一王子って…サクミル王子じゃ…?」
「そうだ。妹の輿入れが叶わなかったから、その代わりニノシスをアッカドに娶ったのだ」
「は…?でも、ジュンフィスのこと…」
くくくっと、王子は笑った。
その瞬間、ニノシスが暴れだした。
「うわわっ…」
「そんなこと認めてはおらぬわ!ジュンフィス!返せ!ジーチャンノワイパー!」
ふふふ…とジュンフィスは笑うと、ごそりとなにか取り出した。
…車の…ワイパー…?