第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
長い長い時間の流れのなか…
ジュンフィスの墳墓を見つからないように、隠して…
自分は呪いの化身みたいになっても、隠し通して…
横穴を延々と掘ってる時に、そんなことを思ったりした。
俺だったら…
俺がもしも、ニノシスの立場だったら…
一体どうしただろう
ニノシスと同じように、呪いの化身みたくなっても…
イシスのように忌み嫌われる容姿になってでも…
ジュンフィスの恒久の眠りを、守ったかも知れない
「…だから、ニノシスのこと…憎みきれないな…」
そう思ってた。
「…人が良すぎるであろう…憎みきれないなどと…」
「へ…?」
思ってただけなんだけど…
最後の方は、どうやら口に出していたらしい。
俺ってば…
「ニノシスは…そなたを殺そうとしたんだぞ…?」
「え…まあ…そうだけども…」
ジュンフィスの顔が不機嫌に歪んだ。
「…俺の正妃を殺そうとしたんだぞ」
「でも…」
俺がここにこなかったら、正妃になったのはニノシスだったのに。
「死んだら、何もならない」
「え…?」
「死んだら、復活しない…のであろう?」
この時代は…まだ身体を残しておけば、未来に復活できると、そう信じられてる。
だから、ミイラを作り続けていたんだ。
ここからあと、何百年もその信仰は続いていく。