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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~


この壁の向こうに、ジュンフィスの棺がある。

そう思うと、胸がいっぱいになった。

涙は次から次へと溢れてきて。
ヒエログリフの壁に両手をつけて、ひたすらあのしあわせだった時を思い出した。

「あ…」

手でヒエログリフを撫でる。

「ナイルの…女神…?」

これって…

「…もしかして、俺のこと…?ジュンフィス…」

壁の向こうに語りかけるようにいうと、コロンと小さな石片が落ちてきた。

まるで不貞腐れたジュンフィスが、返事をしたようだった。

「ふ…ふふ…」

ジュンフィス…俺のこと、忘れないでいてくれたんだ…

「そっかあ…」

そのままヒエログリフを撫でると、ジュンフィスの温もりが鮮やかに思い出された。

「偉大な…王…」

その続きを読もうと、身をかがめた。

「え…?」



王妃シャトシもここに眠る



「俺!?」

俺、ここに眠ってるの…?

作業用の手袋を外して、そのヒエログリフをもう一度撫でた。
指先が熱い。

どうして…?
どういうこと…?

その時、後ろから物音が聞こえた。

「おーい!大野!生きてるか!?生きてるならなんか合図しろっ!」

土砂の向こうから、くぐもった櫻井教授の声が聞こえた。

でも俺は、夢中になってヒエログリフを読んだ。

また、コロンと石片が落ちてくる。



シャトシは一度

ナイルに戻ったが

また偉大なるエジプトに帰った



「帰った…?どうやって…?」
「おーい!大野ぉー!無事だったら合図しろー!」

ああ…うるさい…ちょっと黙っててくれよ!教授!

またコロンと石片が転がってきた。
だんだん、その数は増えてきた。

「え…?」

ボロボロと天井から、砂と小石が落ちてくる。

「わ…ぁっ…」

地鳴りのような轟音が響く。
横穴の天井が崩壊してきた。






”シャトシっ…”


強く

大きな手が俺の腕を掴んだ
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