第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
必死に、壁の砂を手で払った。
ヘルメットに着けてるライトじゃ、広範囲を照らせないから、全体がどうなってるかよく見えない。
でも必死にそのヒエログリフが見えるよう、砂で埋まってる文字を読み取ろうとした。
「ジュン…フィス…」
その中に、ジュンフィスという文字を見つけた。
「ジュンフィスっ…!」
この墓は、偉大なファラオのジュンフィスのものだって
そう書いてある
「ジュンフィスっ…」
本当に…居たんだ…
ジュンフィス…本当に居た…!
涙で、視界がぼやけて困った。
「うっ…うう…」
嗚咽もこらえきれなくて漏れてくる。
それでも、手を動かすことを止められなかった。
「ジュン…フィス…ぅ…」
ぼたぼたと涙が落ちていく。
泣きながら、必死に砂を掻き出して、ヒエログリフを読んだ。
ジュンフィスは偉大な王
民の言うことをよく聞き
よい政治をした
太陽神ラーとナイルの女神の恵みを
一身に受け
偉大な王としてエジプトを統治した
「ジュンフィス…ジュンフィス…」
あんな我儘だったのに…
あんな横暴だったのに…
俺の言うこと聞いてくれたのかな…
民の言うことよく聞き…
偉大な王になったんだ…