第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「どーしても、入るの…?」
三宅さんが、呆れた顔でパイプ椅子に座ってる。
その奥では、櫻井教授がパソコンに向かってなにか打ち込んでる。
相葉と松本が作業しながらチラチラこっちを見てる。
「行きます…」
テントの中は、相変わらず発電機の音がブオーンとうるさい。
外には、銃を携帯したダーオカが立っている。
ニノールの姿は、やっぱり見えない。
「無理しないでいいんだよ?日本、帰っちゃってもいいんだよ?」
家族に止められたけど、俺は退院したら速攻で発掘現場に戻った。
俺が現代に戻ってから、一週間が経過していた。
櫻井教授はいい顔しなかったけど、こっちであったことを日本のご家族に黙ってるからって、無理やり現場に戻して貰うことに成功した。
「いいえ…じゃ、行ってきます」
長い髪を縛って、ヘルメットを被った。
婚儀の時、女官がつけてくれたアクセサリーは、全部病院で取られてた。
…婚儀のときの格好そのままで俺は発見されたんだって…
頭が軽くなって、なんか変な感じだった。
「じゃあ俺も…」
ジュンフィスにそっくりな顔をした松本が助手を申し出た。
「いや、いいよ…」
「でも…」
でも、なんにも感じない。
やっぱり、松本は違う。
ジュンフィスじゃない。
こんなにそっくりな顔してるのに…
「一人で入らせるわけにいかないだろ。松本、行け」
ずっと黙ってた櫻井教授がそう言うから、松本と横穴に入ることになった。