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ヘブンズシュガーⅢ【気象系BL小説】

第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~


あたりは真っ暗で。
でも月は、煌々と辺りを照らしている。

ナイルの水面にも月が出てた。

「…もうちょっと…」

少しだけ…二人きりになりたくて、ちょっと嘘をついた。
ぎゅっと抱きしめてくれた腕を掴むと、ジュンフィスはくすっと笑った。

「そうか…ならば仕方ないな…」

そっと俺の横に座ると、肩を抱き寄せてくれた。

「…ジュンフィス、疲れた?」
「いいや…」
「そっか…」

話すこともなく、ただふたりでナイルを眺めた。

静かに、夜が過ぎていく。

「…シャトシ…」
「ん…?」
「俺の側を離れるでないぞ…?」
「…うん…」
「どこにも…いくな…」
「…いかないよ…」

見上げたジュンフィスの目が潤んでて。
月明かりがキラキラと反射した涙が、ぽろりとこぼれた。

ジュンフィスの手が俺の手を握って。
そのままジュンフィスの胸に触れた。

ドクンドクン…
心臓の鼓動を、指先に感じる。

「シャトシ…」
「ジュンフィス…」

ジュンフィスの顔が近づいてきた。
目を閉じると、熱い唇が触れた。

「んっ…」

その瞬間、ワンピースの裾を引っ張られた。

「な…なに!?」

ナイル川の方に、ズルズルと引きずられていく。

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