第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
神殿の中は静まり返っていて。
松明の弾ける音だけが聞こえていた。
祭壇には、王の正式な装束に身を固めたジュンフィスがいる。
微笑みながらこちらを見ていた。
なんか…かっこいい…
ちょっと顔が赤くなるのも、もういいや…
だって、もう決めたんだもん。
一生、ジュンフィスと一緒にいるって…
大神官の進める儀式は、滞りなく行われ。
満月の昇るのと同時に、俺はエジプトの王妃となった。
神殿を出て宮殿に移ると、大騒ぎだった。
外国の使者や王族が、エジプトの王妃はどんなだと、首を長くして待っていた。
ナイルから生まれたとは本当かと、凄いしつこく聞かれて困った…
どぶろくみたいなお酒をいっぱい飲まされて、酒には強いほうなんだけど、なんだか酔っ払った。
「シャトシ…眠いのか…?」
「あ、ううん。大丈夫…」
「でも、目が半分閉じておるぞ…」
ジュンフィスに笑われて、慌てて両手で顔を擦った。
「それ、だめなやつ…」
「えっ?」
「眠いのだろう?」
一ヶ月…
一緒に寝起きしてたから、もうバレてるみたい…
「ちょっと…だけ…」
「宴はまだ続くぞ。少し外の空気にあたってきたらどうだ?」
ジュンフィスに言われて、ちょっと酔いを醒ますために外に出た。