第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「もお…だからあの日、変だったんだ…」
「へ?なんか言いました?」
マサスが不思議そうな顔で振り向いた。
「なんでもないっ…」
一ヶ月前のあの日のことを思い出して、顔が赤くなった。
あれから…ニノシスがどうなったかっていうのは、誰も教えてくれなくて。
次の日、ジュンフィスが会いに来てくれたんだけど、いつもとあまり変わらなくて。
いつもどおりの強引さだったから、結局今日までなにも聞けていない。
サクミル王子は、一旦妹姫を連れて国に帰るということで、挨拶に来てくれた。
でもどうやらジュンフィスのことは諦めてないみたくて、婚儀のときにまた戻ってくるって…こそっと言っていった。
なんで俺にそんなこと言っていくんだか…
それからはもう、婚儀の準備のために目の回るような忙しさで。
ジュンフィスの兄弟とかにも会わされたし、下ナイルにも一回行った。
なんか色々と神官から授けられてびっくりしたけど、俺はどうやら下エジプトの王妃にもなるようで、儀式が必要だったようだ。
荘厳な神殿に通されて、いろんな儀式をして…
今まで散々土の中に探してきたものを目にして、もう全部持って帰りたいくらいだった。
ジュンフィスに言ったら、また散々笑われたけど。
もう、俺とおまえのものなのだってね。