第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
そのまま、しばらく眠ってしまった。
外からは物音も聞こえてこないし、静かな夜だった。
起きたら、まだマツーオカ将軍は部屋に居て。
風呂に入れだの、ご飯を食えだの…
オカンみたいに世話してくれる。
「あのお…」
「なんでしょう?」
「ジュンフィスは…」
「ああ…まだサクミル王子とお話をされています」
「そっか…」
「心配なさらなくても大丈夫ですよ」
そう言って、にこにこしてるから…
だいぶ頭のごちゃごちゃが取れてきたから、質問してみた。
「あのお…」
「なんでしょう?」
「ニノシスは…」
「ああ…」
少し顔を曇らせた。
「…まあ、お聞きにならないほうがいいでしょう」
と言って、黙り込んでしまった。
もしかして、処刑…とかなのかな…
どうなっちゃうんだろ…
「…あの方はイシスに魅入られたのだ…」
そうポツリと呟いた。
イシスとは、エジプト古代神話に出てくる女神だ。
時代によって、全然信仰のされ方が違う。
生命の母的な扱いをされているかと思ったら、頭が牛になってたりする。
この場合、化け物的扱いってことかな…
そりゃ…現代で墓を暴かれないようにとか…
しかもここに俺を連れてくるなんて…一体どんな力持ってたんだろう。
あんなことできるなんて…化け物ってことだよな。
ゾッとした。