第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「お怪我はありませんか…?ナイルの娘よ…」
「へ…?あ…うん、多分…」
さっき逃げ回ったせいで、唇の腫れていたとこがまたちょっと痛んだ。
ペタペタと頬を触っていたら、その手を握られた。
顔を上げたら、ジュンフィスが俺の手を掴んでた。
「…すまなかった。危ない目に遭わせて…」
「え…だって、ジュンフィスのせいじゃ…」
「そうだな。シャトシが勝手に逃げ出すからこうなった」
「う…」
だって…貞操の危機だったんだもの…
「…ごめん…」
「よし。許す」
「えっ?」
なんか、あっさり許した!
「マツーオカ、しばらくシャトシを頼む」
「わかりました」
「俺はしばらく戻らないから…サクミル、ちょっと来て欲しい」
「え?」
なにがなんだかわからないって顔しながら、サクミル王子は戸惑ってる。
「エジプトの王と、アッカドの王子として話したい」
「…わかった」
ポンポンとジュンフィスは俺の頭を撫でると、サクミル王子と廊下を戻っていった。
「さ、ナイルの娘…部屋に戻りましょう」
俺は、マツーオカ将軍に付き添われて、ナイル川の見える部屋へ戻った。
ずっと戻ってこないから、ダーオカが泣きそうな顔で待っていて、悪いことをしてしまった…
しかし…今日はなんて一日だったんだ…
もう頭、回らないぞ…
疲れて、寝台の布団の上に倒れ込んだ。