第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「俺は、下エジプトと上エジプトの統一王となったのだ」
それだけいうと、紙をマツーオカ将軍に渡した。
「そんな勝手…そんな勝手なこと…!」
「姉上…上エジプトに滞在するだけでなく、度々下エジプトを留守にすることが多かったそうだな?」
「あっ…」
そうだよ…だって、ニノールになって現代に来てたじゃないか…
その間、古代の方ほったらかしだったのか?
「儀式も祈祷もろくにできず、神官どもは困っていたぞ…」
「そんな…」
「喜んで、俺を王にすることを決めたぞ」
「嘘だ!嘘だっ…!」
「もう遅い!国をないがしろにしておいて、民がどうしてついてくるか!」
「民なぞっ…王の言うことを聞くのが民でしょう!?」
「違うっ…!」
ニノシスを怒鳴りつけると、ジュンフィスは俺を見た。
少し、顔を赤くした。
「……?」
「…王とは…民の言うことを聞くものだ…」
「ジュンフィス…」
顔をまっかっかにしたまま、ジュンフィスはマサスに顔を向けた。
「引っ立てろ!」
「はいっ…!」
マサスは嬉しそうに兵士たちに命令すると、なにか喚いているニノシスを引きずるように連れて行った。
マツーオカ将軍が座り込んでる俺を、ゆっくりと手を引いて起こしてくれた。