第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「この者、王妃を殺害しようと企て、またそこにいるアッカドの王子も殺そうと企てた…ひっ捕らえよ!」
「ははっ…」
マサスが兵士に命令すると、ニノシスを捕まえた。
「ま、待ちなさい!私は下エジプトの女王よ!」
「それが何だというのだ」
「私がここで捕らえられたら、下エジプトが離反する…そうなったら、ギリシャやローマとの交易もできなくなるのよ!?」
「ふん…」
ジュンフィスが鼻で笑うと、後ろに向かって手を上げた。
「マツーオカ」
そう呼ぶと、兵士たちの後ろから大男がぬっと現れた。
マツーオカ将軍まで…一体何事なんだ…!?
「例のものを」
「は…」
マツーオカ将軍が懐から、筒を取り出した。
その筒の中から、なにか取り出した。
あれは…パピルスの紙…?
エジプトの古文字のぎっしり書かれた紙を、ジュンフィスはニノシスの鼻先に突きつけた。
「神官による手続きが済んだ。今日から下エジプトは、俺が王になった」
「はあっ…!?誰がそんなことを!」
「姉上…ここ数日、どこに行っていた…?」
「え…?」
ここ数日って…
あの俺のこと殴った日からってこと…?
「姉上は下エジプトの神殿にも宮殿にも姿が見えなかった…その間に、神官どもには許可を貰っている」
「なんですって…!?」