第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「姉上…」
「ジュンフィス…これは…!」
「その者…いや、シャトシは俺の妻だ」
泣きそうな顔で、きっぱりと言い切った。
「えっ…いつ!?」
サクミル王子が素っ頓狂な声を上げた。
「今日!さっき!俺が決めた!」
「やっぱヤッてたんじゃねえか!」
さ、最後まではヤってないよ!?
「あ、あの…サクミル王子…」
「だって、シャトシは男だろ!?」
「姉上だって男だ!問題ない!」
「は!?へ!?ちょ、エジプト、マジ謎なんだけど!?」
頭を掻きむしって、また混乱し始めた。
うん…それ、俺も謎だ…
「なんでもいい!とにかく俺は、シャトシを正妻にすることに決めた!」
「ジュンフィス…そんなこと許さないからっ…!」
「姉上の許可なぞいらぬ…」
「なんですって!?」
ニノシスは思い切り俺の方を振り返って睨んできた。
「姉上は、私の正妻を…この偉大なるエジプトの王妃を殺そうとしたんだ…これがどういうことかわかるな…?」
「へ…?」
バタバタと廊下の奥から人が走ってくる音がする。
「王!こちらでしたか…!」
「遅い!マサス!」
「申し訳ありませんっ…!」
マサスが兵士を率いて駆けつけた。