第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「ぐ…ぐぐ…」
そしてなんだか、うめき声を発している。
「おとなしくせぬか…」
その声は、サクミル王子の声じゃなかった。
誰かが、後ろからニノシスの頭を鷲掴みにしている。
棍棒は、サクミル王子がこれまた後ろから押さえていた。
「無事か…シャトシ」
「う、うん…なんとか…」
サクミル王子はコクンと頷くと、棍棒をニノシスから取り上げた。
抵抗しようとしたニノシスは、頭を掴まれてるから動けない。
「はっ…離せっ…!無礼者っ…!」
ニノシスが暴れようとした瞬間、後ろに居た人が手を離した。
暴れようとした勢いで、よろめいたニノシスは床に膝をついた。
「姉上…残念だ…」
「え…?」
薄暗い廊下が、静寂に包まれた。
「サクミルの言うとおりであった…」
ニノシスの目が驚きで見開かれた。
「ジュンフィス…」
ニノシスが振り返った先には、腰に布をまとっただけの姿のジュンフィスが立っていた。
「この目で見るまでは、信じられなかったが…すまなかった。サクミル」
「いいや…いいんだ。とにかく、これで真実だとわかったろう?」
「ああ…」
薄暗い中、ジュンフィスは泣きそうな顔をして立っている。