第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
身体を起こすと、サクミル王子の向こう側に、黒い装束に身を包んだニノシスが見えた。
「…じっくりこちらで殺してやろうと思ったのに…まさかおまえまで…」
その目は、サクミル王子を通り越して、俺のこと睨んでた。
「ジュンフィスの心を盗むとは…大野…邪魔なやつ…!」
…まさか…
さっき、見られてた…?
「…まとめて、最初からこうしておけばよかったわ…」
手には長い棍棒が握られていた。
「死ねっ!」
「ひゃっ…」
大きく振りかぶって、振り下ろしてきた…!
サクミル王子が俺を庇いながら、横に飛び上がった。
「ちぃっ…」
舌打ちしながら、ニノシスはブンブン棍棒を振り回してくる。
「やめろっ!ニノシス!」
「ええいうるさいわっ!」
サクミル王子は俺を庇いながらも、棍棒をスイスイと避けている。
「女性に乱暴はしたくない!やめるんだ!」
「え…女性?」
あ、そうか。知らないのか。
「さ…サクミル王子っ…」
「なんだ!?」
「あの人、男…」
「はあっ!?」
「ついでに言えば、俺も男…」
「なっ…なんだと!?」
言ってる俺たちの頭上に、また棍棒が降ってきた。
「うわあっ…」
慌てて左右に別れて飛び退いた。