第7章 大野の紋章~考古学者大野智の憂鬱~
「シャトシ…」
今だけ…
今だけでもいいから、ジュンフィスを独り占めしたい。
本当は俺だけのものにしたい。
知らなかった。
俺の中にこんな感情あるなんて。
今までこんなこと、人に思ったことなかったのに…
でも…ジュンフィスは、ファラオだから…
この古代王国の、王なのだから…
そんなわがまま…言っちゃいけない
「ジュンフィス…すき…」
もう一度伝えると、ジュンフィスの顔がくしゃっと歪んで。
太い眉毛がぐうっと寄せられて。
「すき…とはなんだ…?」
「え…?」
「シャトシ…教えてくれ…」
「ジュンフィス…?」
その大きな目から、ポタポタと涙が落ちてきた。
「なぜこのように泣くのだ…?なぜだ…シャトシ…」
「ジュンフィス…」
「教えてくれっ…これは一体何なのだっ!?」
ぎゅうっとジュンフィスが俺のこと抱きしめて。
痛いほど抱きしめられて。
「ジュンフィス…?」
「ナイルの娘なら、わかるだろう!?胸が痛いっ…これがなんだか、わかるだろう!?教えてくれっ…」
それって…
「ジュンフィス…?ねえ、ジュンフィス…」
俺にしがみつくようにジュンフィスは抱きついて、顔を見せてくれない。